祐一:「あゆ〜、何処だ〜」

 祐一は美凪に訳を説明していた間に、あゆを見失ってしまっていた。

 

 その頃あゆは・・・

あゆ:「うぐぅーっ!! 祐一くんのばかばかばかばかばかばかばかばかばかーっ!!」

 ・・・叫びながら、走り続けていた。

 

祐一:「ったく、あゆのやつ何処へ・・・ん・・・?」

 祐一が女風呂の前を通りがかったときに、女風呂の中から小さな声が聞こえてきた。

?:「ふう、・・・・でした」

?:「あ・・・ちょっ・・・かった〜」

?:「なゆ・・・こにいっ・・・しら?」

?:「えう・・・だおふろ・・・ですぅ〜っ」

?:「ま・・・もいませ・・・」

秋子:「あらあら、あんまり入ってるとのぼせちゃいますよ?」

 

祐一:「・・・ま・・・さか・・・な・・・」

 祐一は少し後退りながら考えをまとめてみた。

祐一:(落ち着け、祐一。 ここにいるはずはないんだっ!!

   って追いかけてきたのかも・・・いや、そんなはずは・・・

   他人のそら似ってのもあるんだし・・・ってか、最後の絶対に秋子さんじゃねーかっ!!

   言葉の前にちゃんと秋子って名前まで入ってるしっ!!

   なんだか秋子さんの声だけはっきりと聞こえたし!!)

祐一:「・・・よし、ここはひとまず・・・様子を見るか・・・」

 祐一はそう呟くと角に隠れて秋子さん達(らしき)人物が出てくるのを待つことにした。

 ・・・待つこと5分・・・

祐一:「・・・まだか・・・いや、そんなことより・・・今の俺って滅茶苦茶怪しいんじゃないだろうか・・・」

 女風呂をこそこそと少し離れた角から覗いている男・・・

 十分逮捕されても文句は言えないかもしれない。

 幸い誰も人は通らなかったが・・・

 ・・・+10分・・・

祐一:「やっと出てきたっ!! って・・・まぢですか・・・?」

 出てきた女性達を見ている祐一は全員の名前を言うことが出来ただろう。

 名雪と舞はお風呂でのぼせて、それぞれ秋子さんと佐祐理さんの背に背負われている。

祐一:「何でこんなところに全員いるんだよ・・・って、そんなこと言ってる場合じゃないっ!!

   あいつらとあゆが会ってしまったら・・・せっかくの2人だけの旅行が・・・」

 まぁ、そのせっかくの2人だけの旅行であゆを泣かしてるやつが言える台詞ではないかもしれないが・・・

祐一:「あゆを早く探さないとっ!!」

 その時祐一に聞き慣れない音が聞こえた。

 音はアニメKanonオープニング『florescence』の電子音Ver.だ。

佐祐理:「ほぇ〜? 皆さん、祐一さんがこの近くにいるみたいですよ〜」

祐一&美汐&栞:「何っ!?」

秋子:「あら、細かくは分からないんじゃなかったんですか?」

佐祐理:「いえ〜、半径10メートル以内ならベルが鳴るように出来てるんですよ〜」

 

祐一:「なんだよあの装置は・・・そんなこと言ってる場合じゃないな・・・このピンチをどう切り抜けるか・・・」

 祐一が辺りを見回すと、そこは休憩所のようなものになっており、これ以上さきには進めない。

 つまり行き止まりになっている。

祐一:「選択肢は4つ・・・

   1.休憩所に付き物の自動販売機の裏に隠れる。

   2.これまた休憩所に付き物のマッサージ椅子の裏に隠れる。

   3.これまた休憩所に付き物(?)の観葉植物の裏に隠れる。

   4.みんながこっちに来ない。

   ・・・どれにするか・・・?

   まぁ、4が一番いいんだけど・・・どうだ・・・?」

 祐一が柱の陰からKanon女子を覗き見ると、それぞれが話し合っている。

 

秋子:「では、私と倉田さんは名雪と舞さんを部屋に運んでおきます」

香里:「そうですね、そのほうがいいでしょうね・・・」

 香里が見ると、秋子さんと佐祐理さんの背に背負われた舞と名雪は、うんうんとうなされていた。

 たまに名雪が「お母さん、そのジャムだけは〜」とかなんとか呟いていた。

佐祐理:「では、このレーダーは香里さんに渡しておきますね」

 そう言って佐祐理さんは香里に、すでに音を止めてある『祐一レーダー』を手渡した。

秋子:「それじゃあ皆さん、がんばって祐一さんを見つけてくださいね」

 秋子さんと佐祐理さんは2人の大きな荷物を軽々抱え、祐一の逆方向へと向かった。

 

祐一:「よしっ!! 秋子さんが戦線離脱ってのはかなり運がいいぞっ!!」

 だが、祐一の喜びをよそに香里の無情な言葉が祐一の耳を貫いた。

香里:「じゃあ、あっちから探しましょうか」

 香里の指はまっすぐに祐一のいる方向に向いていた。

祐一:(こっちから探すのかよっ!?)

 ぞろぞろとやってくるKanon女子軍にあわてた祐一は、とりあえず・・・

 

香里:「相沢くん〜? ・・・こっちじゃないのかしら・・・?」

 香里率いるKanon女子軍が休憩所にやってくると、そこには人っ子一人いない普通の休憩所があった。

美汐:「相沢さんの気配はしますよ・・・少なくとも10分前にはここにいたようです」

祐一:(お前は何者だよっ!!)

美汐:「・・・今、相沢さんの思いが伝わりました」

 美汐はそう言いながら頬を朱色に染めている。

祐一:(頬を染めるような事なんて言ってないだろうがっ!! な、何が伝わったんだっ!? 何がっ!?)

栞:「天野さん、電波属性だったんですか?」

香里:「栞・・・それはちょっと違うと思うんだけど・・・?」

美汐:「そうですね、少し違います。 相沢さん専用電波ですから」

真琴:「美汐すっご〜いっ♪ ちょっと顔が赤いのも専用だからね」

 赤い専用ってあんた・・・

香里:「いや、だから意味が違う・・・はぁ、まぁいいわ。 その辺りをちょっと探してみましょうか」

祐一:(何も無いって思ったんなら早く何処かへ行ってくれよ・・・)

美汐:「また、相沢さんの心の声が・・・相沢さんったら・・・そんなこと言うなんて・・・大胆ですね♪」

祐一:(いや、おいっ!! だから、俺が何を言ったってんだっ!!)

 祐一の心の叫びも虚しく、美汐は暴走を続ける。

 その間にも皆はそれぞれ辺りを探し出す。

 ・・・10分後・・・

真琴:「あう〜、ここにはいないんじゃないの〜」

 真琴の疲れ果てた声が休憩所に響く。

 そして真琴はそのままマッサージ椅子に腰を下ろす。

祐一:(ぐお・・・)

 かれこれ10分、香里軍はあらゆるところを隅々まで探し尽くしていた。

 天井裏から地下室を見つけるに至るまで・・・

香里:「休憩所になんで地下室なんかがあるのかしらね・・・」

美汐:「・・・どこかに繋がっているのでしょうか」

栞:「行ってみますか?」

 栞が香里の顔を覗き込むようにして訊ねる。

 香里は懐からレーダーを取りだし、ボタンを押すとまたさっきのメロディが流れてくる。

香里:「まだこの近くにいるみたいだけど・・・この地下通路、距離だけなら10メートルはないわね・・・」

美汐:「考えるより行動です、行きましょう、真琴」

真琴:「あう〜、祐一を見つけたらこの苦労を倍にして返してあげるんだから」

 そんなことを言いながら、美汐を先頭に真琴が、続いて栞、香里と続く。

祐一:「・・・行ったか・・・?」

 祐一はそう呟きながらクッションを退ける。
                      、
祐一:「ふぅ、さすがの香里もマッサージ椅子の中に隠れていたとは気付かなかったか・・・」

 祐一は香里達がくる一瞬の間にマッサージ椅子の中身を無理矢理取りだし、その取り出した中身をゴミ箱に突っ込み

 マッサージ機の空いた隙間に体を入れ、クッションで体を隠していたのだった。

祐一:「あとで真琴にはダイエットするように言っとかないとな・・・かなり重かった。

   っと、そんなことよりあゆを探しに行かないと・・・」

香里:「見つけたわよっ!! 相沢くんっ!!」

祐一:「げっ!?・・・香里にみんな・・・どーしてバレたんだ・・・」

香里:「普通ゴミ箱に機械の残骸が入ってたら怪しむわよ・・・ここにある機械類は自動販売機とマッサージ機のみ

   そして、自動販売機は正常に起動している・・・となればこの部品はマッサージ機の物に間違いないってことになるのよっ!!

   一度クッションを外そうと思ったんだけど、堅くて全然外れなかったから、あたしたちがいなくなったら出てくるかと思ったら案の定

   あなたはまんまと引っかかってのこのこ出てきたってわけ」

 香里は長々と説明をし、きちんと言えたことの余韻に浸っていた。

 いつも思うんだが・・・殺人事件のときなどでもこの説明の間に逃げれるんじゃないだろうか・・・

祐一:「ふっふっふっ・・・バレちゃあしょうがない・・・取りあえず・・・逃げるっ!!」

 祐一はちゃんと説明を聞き終えてから、律儀に逃げ出した。

美汐:「あっ・・・相沢さんが逃げましたよ、美坂先輩」

 香里は余韻に浸っていて目の前が全く見えていなかった。

 美汐の声に気付いて前を見たとき、そこには祐一の姿はなかった。

香里:「あ、相沢くんっ!? みんなっ、追うわよっ!!」

真琴&美汐&栞:「ラジャー、ボスッ!!」

 香里軍は祐一を追って走り出した。

 

 そう言えばあゆは・・・

あゆ:「うぐぅ・・・今回出番ほとんどなかった・・・」

 ・・・と、自室の隅で泣いていた・・・

 大丈夫だ、あゆ。 北川は名前さえも出てきていないっ!!

 

 

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