真琴:「あづい〜・・・」
じりじりと照りつける太陽・・・蝉の声・・・そして・・・クーラーの壊れた水瀬家・・・いつもの風景だ(?)
今祐一、名雪は学校へ、秋子は川へ洗濯へ・・・っじゃなくて夕飯の買い物へと出かけている。
真琴は今日、保母さんのバイトがお休みなので、家でのんびりするつもりだったのだが・・・
真琴:「クーラーが壊れてるなんて聞いてないわよぅ・・・」
・・・とまあ、先ほどからこの調子でリビングのソファーに寝転がっていた。
今日もいつものように、祐一が朝出ていく時に「頑張れよ」と頭を撫でてくれた。
「今日はバイトはお休みなのに」と内心で笑っていたのだが、祐一の励ましは別のことでの励ましだったのだろう。
おそらく祐一の言葉には文頭に「今日は暑いがクーラーは壊れてるから」という言葉が欠けていたのだろう。
いつも通りに学校へ向かったので急いでいるのは仕方がないことだ。
毎朝全力ダッシュの生活は名雪と登校する限りは絶対になおらないだろう。
真琴:「・・・よしっだらだらしてたってなんにもならないんだからとりあえずなにかしよ」
すでに言葉は棒読み、漢字に直す気力もないのだが、少しだけ気合いをいれて真琴は立ち上がった。
真琴:「まずは・・・おひるねっ!! おやすみなさ〜い・・・」
一度立ち上がった真琴は、そう言い残すと再びソファーに倒れ込んだ。
真琴:「寝てたら暑いのも気にならないもんね、真琴ってばあったまいい〜♪」
てへへと笑みを浮かべながら、真琴は目を瞑った。
辺りは静寂に包まれる。
時折、元気にはしゃぐ子供の声がどこからともなく聞こえてくる。
そんな中、真琴は静かに寝付・・・けなかった。
真琴:「あっっっっっっつ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜い〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっっっっっっっ!!!!!」
水瀬家を中心に半径2〜3qは聞こえそうなほどの大音量で真琴は叫んだ。
だが叫んだからといって涼しくなるわけではない。
むしろ声に出して確認すると余計暑さが増す気がする。
名雪:「ただいま〜〜」
真琴が叫び声を上げた直後、名雪の眠たそうな声が水瀬家にまったりと濃厚に広がる。
真琴は返事をする元気もなく、芋虫のように這いながらリビングを出、玄関を覗き込む。
名雪は玄関で「うにゅ〜、引っ付くよ〜」とか言いながら制服のスカートを両手で持ちひらひらと空気を送り込んでいた。
真琴:「なゆき〜・・・」
真琴のまったりとした声が名雪の耳に届く。
名雪:「わっ、真琴・・・どうしたの?」
名雪は真琴と同じように這い蹲って真琴に話しかける。
真琴:「今日は白・・・」
名雪:「さっ、シャワーでも浴びて着替えようかなっ」
名雪は何もなかったかのように自分の部屋へと階段を上がっていく。
後に残されたのは踏みつけられた真琴だけだった。
名雪:「ぷは〜、やっぱりお風呂上がりはイチゴ牛乳だよ〜」
お風呂から上がり、普段着に着替え終わった名雪が手を腰に、イチゴ瓶牛乳を飲んでいた。
真琴:「ぱふ〜、ちゃんと牛乳飲んでおかないと、いつかあゆあゆやしおしおに胸の大きさ、抜かされちゃうもんね」
真琴も名雪といっしょにお風呂に入って、少しさっぱりしたようだ。
彼女も名雪の隣で同じ格好をして牛乳を飲んでいる。
こちらは普通の瓶牛乳だ。
お決まりのように、どこからか「あゆあゆじゃないもん」とか「しおしおって何ですかっ!? 枯れてるみたいじゃないですかっ!?」などと
聞こえてくるがまったくもって気にしない。
名雪:「ん〜、でもあの2人には絶対に抜かされないと思うな〜」
真琴:「あはっ、ど〜かん♪」
2人の会話に、これまた「うぐぅ・・・いつか大きくなるもん・・・」やら「えう〜、そんなこと言う人嫌いです!!」などと
聞こえてくるようだが、これもまた無視する。
名雪:「それにしても・・・」
瓶を台所に置いた名雪が真琴に目線を向ける。
名雪:「眠いね〜・・・」
名雪はそう言いながら、すでに名雪ワールドへと移行し始めていた。
単純に言えば寝ているのである。
立ったまま、しかも一応会話も成立するから恐ろしい。
真琴:「あう〜、名雪だけ寝るなんてずるいわよぅ」
真琴が抗議の声を上げた。
名雪:「うにゅ・・・じゃあ、けろぴーも一緒に寝よ・・・♪」
名雪はそう言うと真琴を抱きしめ、そのままトコトコと名雪の部屋まで歩いていく。
真琴は抵抗を試みるも、このモードの名雪はいつも以上の力が発揮できるらしく、全然歯が立たない。
ついには真琴も抵抗を諦め、名雪の手の中でうとうとし始めた。
真琴:「・・・(なんだか懐かしい感じ・・・? なんでだろ・・・まぁ・・・気持ちいいから・・・いいや・・・)」
こうして真琴は暑さも忘れ、名雪に抱かれながらゆっくりと寝息を立て始めた。
祐一:「ただいま〜」
秋子:「おかえりなさい」
米俵を2個も担いだ祐一と、秋子が水瀬家の門をくぐる。
祐一:「って、秋子さんも一緒に帰って来たんですからなんだか変じゃないですか?」
秋子:「うふふ、そうかもしれません。 さて、早く夕飯の準備をしないといけませんね」
秋子はそう言うとキッチンへと姿を消した。
米俵をらくらく担いで・・・
祐一:「・・・秋子さんだしな」
もうそれだけで、他には何も理由はいらないようだ。
祐一:「・・・着替えてくるか」
祐一はそう呟くと階段を上がっていった。
祐一:「・・・そう言えば、名雪と真琴は何処に行ったんだ?」
家に帰ってきてから一度も姿を見ていない。
靴はあったので家にいることは間違いないのだろう。
祐一:「ま、名雪の部屋で昼寝でもしてるんだろ。 俺も夕飯まで少し横になるか」
祐一は私服に着替え終わると、ベッドの掛け布団を持ち上げた。
するとそこには、丸くなってすやすやと寝息を立てている2人の少女がいた。
祐一:「・・・ここ、一応俺の部屋だよな・・・?」
居候している身とはいえ、自分の部屋で他人が寝ているのにはさすがに驚きが隠せない。
祐一:「・・・入れねーじゃん・・・」
いくら大きなベッドといっても、2人を起こさずというのは非常に困難を極めるだろう。
祐一があれこれ思案していると、なにやらポソッと2人がそれぞれ呟いた。
真琴&名雪:「・・・祐一・・・大好き・・・」
きっちりとハモッた2人に、少しどきどきしながら寝顔を見つめる。
祐一:「・・・」
祐一は持ち上げていた掛け布団を2人にかけ直してやると、2人の耳元でそっと呟いた。
祐一:「俺も・・・お前達のこと、好きだよ」
そうして、祐一はそっと自分の部屋を後にした。
階下に降りた祐一を待っていたのは秋子だった。
秋子:「祐一さんも大変ですね」
微笑みながら秋子はそう祐一に話しかける。
祐一:「そうですね・・・でも・・・」
秋子:「でも?」
祐一は少し考える素振りを見せ首を振る。
祐一:「いえ・・・俺は・・・幸せですね」
秋子は祐一の頭に手を置き、すっと抱きしめた。
秋子:「・・・私たちはみんな、祐一さんがいてくれて幸せですよ。 たとえ、それがどのような結果になったとしても・・・」
祐一:「・・・そうだと・・・いいです・・・」
祐一の頬に、一筋の光が流れた。
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