祐一:「なっ・・・こっちに来るだとっ!?」
水瀬家の朝・・・いつもの騒がしさとは少し違う騒がしさ・・・
今日は日曜、学校は休みだ。
名雪はお決まりのように熟睡中、例え今この瞬間水瀬家がひっくり返ったとしても起きることはないだろう。
真琴は昨夜、というより今朝方まで漫画を読んでいたらしく、こいつも死んだように眠っている。
我が恋人らしきあゆはというと・・・
あゆ:「恋人らしきじゃなくて、恋人だよっ!!」
などとのたもうておられる・・・
ああ・・・平和だ・・・
祐一:「・・・っじゃねーっ!! なんだってんだっ!? なんで今頃になって帰ってくるんだよっ!!」
あまりのショックに一瞬、異世界へ飛びかけたぞ。
あゆなんて、真横で俺の叫び声を聞いたせいで白目をむいて立ったまま気を失っている。
電話の向こうの声は抑揚の付かない声で答えてくる。
抑揚のないって・・・何処かの犯人かよ・・・
?:『オマエノタイセツナモノハイタダイタ・・・カエシテホシクバ・・・』
祐一:「いっぺん死んでこいーっ!!」
あゆが横で痙攣を始めている・・・そんなに声でかかったのか?
夏子:『冗談だってば、祐ちゃん♪ ところで、なんで私の名前、夏子なんだろうねぇ』
・・・俺の母さん、相沢夏子・・・このバカが本当に俺の母親なのかどうか怪しいところだ。
祐一:「・・・春子だと晴子さんとかぶるからだろ・・・」
夏子:『ぴんぽ〜ん♪ よく分かったね〜、祐ちゃん』
祐一:「切るぞ」
俺はあゆを横目で見る。
さっさと切ってあゆを助けてやらないと、すでに痙攣は止まって床に倒れ込んでしまっている。
夏子:『うっふっふ〜、今、恋人のあゆちゃんの心配してたでしょ〜♪』
祐一:「なっ、なんでそれをっ!?」
夏子:「だって、今、祐ちゃんの後ろにいるんだもん♪」
俺の視界の端に映る俺の母親のような生物が嬉しそうな顔で話しかけてくる。
茶色の癖のついた髪、俺の目線ほどの身長、加えてこの喋り・・・
俺はそんな生物などさておき、あゆを抱きかかえ、二階の俺の部屋へ上がろうとする。
雄二:「お前をそんな子に育てた覚えはないっ!!」
目の前に立ちふさがる変な親父型生物・・・おそらく相沢雄二とでも名乗るのだろう。
こちらも茶髪、何処からどう見ても完璧な平凡な親父にしか見えない。
そいつが何かのたもうておられる。
だから俺も言ってやったさ。
祐一:「俺をここに預けておいてのうのうと・・・お前に育てられた記憶は全っ然ないっ!!」
これには親父もダウン。
俺はそんな親を放って置いて二階へ、そしてあゆを布団に横たえる。
あゆ:「う・・・ん・・・、祐一・・・くん?」
祐一:「起きたのか、あゆ」
あゆがゆっくり起きあがる。
俺はそんなあゆの背を支えてやる。
あゆ:「あれ・・・ボク、何してたんだろ・・・?}
祐一:「俺の声の大きさにびっくりして倒れてたんだ」
それを聞いてあゆの顔が少し曇る。
あゆ:「えっ・・・ううん、びっくりしたのは確かだけど、倒れたりはしないよっ。
それよりも何か・・・とんっ、っていう衝撃が首筋に・・・」
俺はあゆの言葉を聞いてすぐに部屋を飛び出した。
そして、階下の母さん、夏子に向かって二階からの跳び蹴りを喰らわす。
そりゃ、母さんは吹っ飛んだね。
水瀬家のフローリングを綺麗に滑って玄関から家の外へと。
次の瞬間には横で笑って立ってたけどな・・・
お前は一体何者なんだよ・・・
ついでに言っておくと、親父は階段に座り込んで白く燃え尽きてたりする。
秋子:「いらっしゃい、姉さん、雄二さん」
リビングに入った俺と親を迎えてくれたのはやっぱり秋子さんだった。
ご丁寧にお茶の用意も万全。
部屋中にコーヒーのいい香りが充満している。
なんで俺の母親が秋子さんじゃなく、俺の横のこれなのかが残念だ。
夏子:「やっほ〜、秋子〜。 元気だった〜♪」
そういってこいつは秋子さんに抱きつく。
さて、あとはゆっくり話でもしててくれ・・・俺はあゆの様子でも見てく・・・
夏子:「あゆちゃんに私たちのこと紹介してあげなきゃね〜♪」
祐一:「秋子さん、こいつらのことお願いします」
速攻部屋を出ていこうとする母さんを俺は後ろから足払い&踵落としで沈め、あゆの元へと向かう。
俺は自室の部屋の扉を開ける。
夏子:「私が祐ちゃんの母親の夏子だよ〜♪ こっちの白いのが祐ちゃんの父親で私の愛する夫の雄二だったりするよ」
・・・なんで沈めたお前らが俺より先にこの部屋に来れるんだ・・・父さん白いままだし
俺は頭の痛みを何とか抑え、この親どもをつまみ出した。
扉の外で少しじたばたと暴れていたが、秋子さんが現れて
秋子:「姉さん・・・あれ、食べますか・・・?」
と言ったのをきっかけに一斉に声は無くなった。
おそらくだが・・・喰わされたんだろうな・・・あのジャム・・・
こんな時はあんな親でも不憫に思うな。
あゆ:「・・・すごいお母さんだね」
あゆが驚いた顔で俺を見ている。
まぁ、あれを見て驚かないやつはほとんどいなかったぞ。
俺の親に今まで会った奴らの中では唯一、名雪だけが「くー」だったな。
祐一:「すまん、あゆ。 うちの愚親が迷惑をかけて・・・」
・・・絶対に子供の言う台詞じゃないな。
だが、あゆは俺に笑顔を向け言った。
あゆ:「ううん、そんなこと無いよっ。 なんだか楽しい人で良かったよっ」
祐一:「まあ・・・楽しいと言うかおかしいと言うか・・・」
夏子:「誰がおかしいんだろ〜ね〜♪」
どこから入ってきたこのババア・・・というかよくあのジャムから立ち直れたな
夏子:「どこからって、ドアからに決まってるじゃない♪ あのジャムは雄二が守ってくれて・・・」
親父を盾にして逃げてきたな・・・こいつ
祐一:「音がしなかった・・・っじゃなくてっ!! 俺の考えてることを勝手に読むなっ!!」
あゆ:「祐一くん・・・口に出してたよ・・・」
あゆが俺に向かってため息混じりにそう言った。
そうか・・・またやってたんだな・・・
夏子:「そう言うこと〜。 さっ、あゆちゃんも下でいっしょにお話しましょっか♪」
そう言って母さんはあゆを連れて(肩に抱えて)下へと降りていった。
あゆ・・・もうちょっと抵抗してくれ・・・
俺が下に降りると、あゆと母さんに秋子さん、ついでに父さん(まだ白い・・・というか存在自体が薄い・・・)が仲良く話をしていた。
あゆ・・・仲良くなるのはいいんだが、速すぎだろ・・・
・・・もう勝手にしてくれ・・・
俺は1人静かに部屋を立ち去ろうと開けかけた扉を閉め直す。
ばたんという音と共に後ろにババアが立っていた。
祐一:「・・・お前は一体何者だ?」
夏子:「将来のあゆちゃんのお母様♪」
祐一:「なっ!?」
自分の顔が赤くなっているのがよく分かる。
慌てて平静を保とうとするが、その前に再び母さんが話しだす。
夏子:「いいと思うよ? ・・・祐ちゃんも大人になったねぇ・・・」
感慨深げに言う母の顔は・・・本当に・・・殴ってやろうかと思うぐらい憎たらしい笑みを浮かべていた・・・
夏子:「さっきあゆちゃんに聞いちゃったんだよね〜♪ 祐ちゃんがあゆちゃんにベッドの上で・・・」
容赦のなく肘を鳩尾にたたき込み、前かがみになったところに踵落とし・・・
崩れ落ちる奇天烈ババア。
祐一:「あゆっ!! 逃げるぞっ!!」
俺は扉を開け、あゆを掴んで家を飛び出す。
こんな親と俺のあゆを一緒に居させるのはあゆのためにならない。
あゆが頬を赤らめながら俺に引っ張られ空中を舞っている。
また声に出してたらしい。
そんなことより・・・あゆの足が地面につかないほどの速さで走れる俺って一体・・・
俺も毎朝名雪に鍛えられてるからな。
秋子さんが家の前で母さんの襟首を掴みながら手を振っている。
秋子:「夕飯までには帰ってきてくださいね、祐一さん」
祐一:「はいっ、分かりましたっ!!」
あゆ:「うぐぅ〜〜〜」
俺はそのまま走れる限り走り、夕飯までは帰ってくることはなかった・・・
夏子:「ふぅ・・・祐ちゃん・・・お母さんのことが嫌いになったの・・・?」
秋子:「元からだと思いますよ、姉さん」
秋子の容赦ない言葉にも夏子は一向に怯まない。
夏子:「はぁ・・・でも、これで決定だね」
夏子は少し寂しそうに家の中へと戻っていく。
秋子は夏子に後について家の中に入りながら、問いかけた。
秋子:「何がです?」
夏子:「てへへ〜、今日来たのはね、実は私たちの仕事も一段落ついたし、祐ちゃんを引き取ろうと思ってきたんだ」
そう言いながら白い物体(雄二)を背中に抱える夏子。
秋子:「・・・姉さん」
夏子:「でもやっぱりやめるよ。 祐ちゃんもこっちで楽しくやってるみたいだし・・・それに」
秋子:「あゆちゃんを悲しませることになりますからね・・・」
秋子の呟くような声に夏子の動きがぴたりと止まる。
夏子:「・・・あの子はいい子だよ。 祐ちゃんのことをすっごく思ってくれてる・・・
だからさ、私がいなくても、あゆちゃんがいてくれれば・・・」
秋子:「また・・・遊びに来てくださいね、姉さん」
秋子が夏子を抱きしめ言った。
いつの間にかお互い、目には涙が溢れていた。
夏子:「えへへ・・・じゃあっ、また来るよっ♪」
そう言って嵐は何事もなかったかのように過ぎていった。
次の日・・・
夏子:「祐ちゃ〜んっ♪ 遊びに来たよ〜っ♪ って言うか、家引っ越してきたよ〜、今日からお隣さんっ♪」
祐一:「死んどけーっ!!」
この日から祐一の苦労の種がまた1つ増えることになったのだった・・・
あとがき・・・みたいなものだったりします。
え〜っと、まず・・・Sin.M.さん、ごめんなさいっ!!
期待してたかどうかはともかく、全然思っていた物と違うと思います〜・・・
これ、とりあえず続ける気は無いんですけど・・・続けようと思えば続きますね。
今のところは続けない路線ということで・・・
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