最近、祐一さんと舞が2人きりで何かをしています。
少し前、中庭でも2人きりで何かをやってましたよね。
佐祐理は・・・いつも仲間はずれです・・・
いつもの場所でいつもの時間にいつも通りにシートをひいて2人の少女と共に食事・・・
だが今日は少し違っていた・・・佐祐理さんがまだ来ていない。
祐一:「舞〜、佐祐理さんはまだなのか?」
祐一は舞の束ねた髪を弄びながら訊ねた。
そんな祐一を気にもしないで舞は答える。
舞:「あと21秒・・・」
祐一:「よ、よく分かるな・・・」
舞:「愛の力・・・」
舞はそう呟きながら真っ赤になった。
祐一:「いや、あの〜舞さん・・・? いや、そんなことより俺はもうお払い箱か・・・」
舞と付き合い始めて数ヶ月経つが、とうとう捨てられたようだ。
祐一は後ろを向いていじけてしまう。
舞の髪を掴んだままで
舞:「・・・祐一、少し痛い・・・」
舞は祐一が髪を持ったままなので、首を少し反らす状態で動けないでいた。
祐一:「あ、すまん、舞」
そう言って祐一は手を放す。
舞は後ろ髪を整え、祐一の方を向く。
舞:「・・・佐祐理のことは好き・・・でも祐一のことも好き・・・それじゃあダメ・・・?」
舞が祐一の顔を覗き込むようにして見てくる。
祐一:「い〜や、ダメじゃない。 俺も舞も佐祐理さんも大好きだからな」
祐一はそう言って舞を抱きしめる。
舞は苦しそうにしながらも祐一に寄りかかる。
やがて祐一は舞をそっと離した。
祐一:「そろそろ時間だな」
祐一はその場で立ち上がり大きく伸びをする。
その間に舞は用意してあった鞄の中から包みを取り出した。
その時、祐一と舞にはトタトタと階段を上ってくる足音が聞こえてきた。
祐一:「お、佐祐理さんが来たみたいだな」
舞:「蜂蜜熊さん」
祐一:「・・・すまんが、舞。 はちみつくまさんを漢字に直さないでくれ・・・
とてつもなく嫌だ・・・」
舞:「・・・はちみつくまさん」
舞は少し頬を膨らませながらもコクリと頷いた。
佐祐理:「ふぅ、考え事してたら少し遅くなってしまいました〜。 急がないと舞と祐一さんがお腹を空かせて待ってます」
佐祐理はずっと考えていたことを忘れようとし、頭を振る。
そのたびに大きなリボンが大きく揺れる。
佐祐理:「よしっ」
佐祐理は頬をぱちんと一叩きするといつもの場所へと向かって走り出した。
・・・でも・・・2人は佐祐理には言えない隠し事があるんですよね・・・
・・・佐祐理は・・・お邪魔なんですよね・・・
佐祐理:「ほぇ〜、到着です〜」
佐祐理は肩で息をしながら屋上前の場所へと到着した。
顔には無理に笑みを浮かべている。
佐祐理が息を整え目の前を見た瞬間、祐一と舞の持っていたクラッカーがパンッという
音を立てて弾けた。
佐祐理:「きゃっ!?」
祐一:「お誕生日おめでとうございます、佐祐理さん」
舞:「誕生日・・・おめでとう、佐祐理」
舞はそう言って手に抱えていた花束を佐祐理に渡した。
佐祐理は驚きのあまり現在の状況をまだ把握できていない。
佐祐理:「え〜っと・・・佐祐理は・・・誕生日・・・?」
祐一:「そうですよ、佐祐理さん。 今日は佐祐理さんの誕生日じゃないですか」
今日は五月五日はこどもの日、そして佐祐理さんの誕生日でもある。
佐祐理:「ほぇ〜、すっかり忘れていました〜。 今日は佐祐理のお誕生日だったんですね〜」
佐祐理は自分のことではないような口調で話す。
用意されていたシートに座り、いつものように持ってきた重箱弁当を取り出す。
・・・それでも・・・佐祐理はのけ者なんですよね・・・
祐一:「あっ、佐祐理さん」
佐祐理:「なんですか、祐一さん?」
佐祐理の弁当を出す手が止まる。
祐一:「え〜と、今日は佐祐理さんの誕生日ですからね」
祐一は少し照れたようにそう言うと後ろから小さな箱を取り出す。
そしてそれを佐祐理に手渡した。
佐祐理:「なんでしょうか、これ?」
祐一:「開けてみてください」
佐祐理は言われた通りに包みを開ける。
箱の中には月を形取ったペンダントがきらきらと輝きを放っていた。
佐祐理:「ほぇ〜・・・きれいです〜」
祐一:「それは俺からのプレゼントです」
佐祐理:「ありがとうございます、祐一さん。 大事にしますね」
佐祐理はそう言ってペンダントを首にさげる。
祐一:「あと、舞からのプレゼントです。 ほら、舞」
祐一は後ろで小さくなっている舞に声をかける。
いつもの舞以上に今日は口数が少ない。
その原因は舞の持っている包みにあった。
佐祐理:「舞、それは?」
佐祐理が包みを指し訊ねる。
舞は咄嗟にそれを後ろに隠す。
祐一はそんな舞を見て、佐祐理には聞こえないほどの声でそっと舞の耳元で囁く。
・・・佐祐理には聞かせたくないんですよね・・・
祐一:「舞、佐祐理さんに渡さなきゃ。 そのために頑張ったんだろ」
舞:「・・・でも・・・」
祐一:「でも・・・じゃないだろ。 佐祐理さんは絶対喜んでくれるよ」
そう言って祐一は舞の背中をそっと押してやる。
舞も決心したのか、佐祐理に包みを渡す。
佐祐理:「あはは〜、なんでしょうか〜。 舞、開けても良い?」
佐祐理は包みを手に取り、舞に訊ねる。
舞:「・・・はちみつくまさん・・・」
舞はすでにそっぽを向いていたが、返事だけは返ってくる。
佐祐理はゆっくりと包みを開いていく。
祐一はその光景を黙って見つめていた。
佐祐理:「・・・これは・・・」
ケーキだった。
丸いイチゴの乗ったショートケーキのようなのだが、形は少し崩れていた。
ケーキの上にはホワイトチョコで『佐祐理、誕生日おめでとう』と書いた板チョコがちょこんと乗っている。
祐一:「舞が作ったんですよ」
不思議そうな顔をしている佐祐理に祐一が囁く。
祐一:「あいつ、なんでか分からないけど、こういうことは不器用みたいで・・・
でも、この一週間ほど・・・秋子さん、えっと、俺の居候している家の家主さんに教えてもらいながら
一生懸命頑張ってたんですよ・・・」
それじゃあ・・・
祐一はそれだけ言うと舞をこちらに向ける。
祐一:「ほら、舞」
舞は顔を真っ赤にして俯き続けている。
舞:「・・・見た目は悪いけど・・・食べられる・・・はず」
舞はそう言って顔を上げる。
最近お二人が何かをやってらしたのは・・・佐祐理のため・・・?
その目に映ったのは笑みを浮かべながら涙を流す佐祐理の姿だった。
舞:「・・・佐祐理・・・そんなにおいしくなかった・・・?」
佐祐理:「・・・ううん・・・違うよ・・・おいしくないわけ・・・ないよ・・・」
佐祐理はそう言うと、舞に抱きつく。
佐祐理:「舞っ・・・まいっ・・・ありがとうっ・・・」
佐祐理は泣きながら舞の胸に踞る。
舞:「・・・佐祐理・・・」
舞は涙を流し続ける佐祐理の頭を撫でる。
しばらくして佐祐理は泣きやむと祐一と舞どちらに言うでもなく呟いた。
ありがとう・・・と・・・
その言葉にハッピーバースデーという言葉が再び紡がれた・・・
・・・佐祐理は・・・幸せです
佐祐理:「・・・そう言えば」
祐一:「何ですか?」
佐祐理:「祐一さんがこちらにいらしたのって1/7っておっしゃってましたよね?」
祐一:「はい、そうですよ」
佐祐理:「佐祐理たちってその時三年生でしたよね・・・」
舞:「・・・はちみつくまさん」
祐一:「それがどうかしたんですか?」
佐祐理:「5/5の休みの日に制服で、しかも佐祐理と舞は卒業してるはずですよね。
なのにどうしてここにいるんでしょうか・・・?」
祐一&舞&佐祐理:「・・・」
祐一:「ま、まぁ、楽しければいいですよっ」
佐祐理:「あはは〜、そうですね♪」
舞:「はちみつくまさん」
祐一:「・・・いいんだろうか・・・本当にそれで・・・?」
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