佐祐理:「祐一さんっ、あっそびっましょ〜っ♪」

舞:「・・・あっそびっましょー・・・」

 いつもの水瀬家の前、元気良く凛と響く声と小さく、それでいて喜びを含んだ声が響き渡る。

 その声に辺りの住人達がじろじろと好奇の視線を集めてくる。

 どたどたどたっっっ・・・

 家の中から急いで階段を駆け下りてくる足音。

 バタンッ!!

 勢いよく開いた扉から現れた影に舞と佐祐理が素早く引き込まれた。

祐一:「ハァ・・・ハァ・・・」

 息を吐きながら舞と佐祐理を見る祐一。

舞:「・・・祐一、息が荒い」

佐祐理:「ハァハァだなんて・・・佐祐理困っちゃいます♪」

 何を思ったのか頬を赤らめる佐祐理と見たそのままを述べる舞。

祐一:「ま・・・まさか呼び鈴も押さずに大声で呼び出すとは思いもよらなかったんですよ・・・」

佐祐理:「あははー、やっぱりこういう呼び出し方のほうが風情があっていいじゃないですかー」

舞:「・・・恥ずかしかった」

 今度は逆に舞が頬を赤らめ、佐祐理が思いを述べる。

祐一:「はぁ・・・まぁ、いいんですけど・・・で、今日はどうするんですか?」

佐祐理:「動物園には行けないですからね〜・・・」

舞:「・・・動物園、行きたかった・・・」

 連日降り続いた大雪のおかげで今日の、『舞の誕生日に動物園へとるんたった計画』(命名佐祐理)が音を立てて崩れてしまったのである。

 何しろ積もった雪の高さはゆうに2メートルを超えるかというほどである。

 動物園以前に市内の交通機関が全て麻痺状態である。

祐一:「そう言えば、2人はどうやってここまで来たんだ?」

 2m以上の雪の中を歩いてきたにしては2人の服装に雪の跡が全くと言っていいほどない。

佐祐理:「それは佐祐理のまじかるな力で何とかなるんですよ〜♪」

舞:「・・・佐祐理、たぶん私より強い」

祐一:「まじかる・・・ですか・・・」

 渇いた笑みを貼り付け祐一は呟いた。

佐祐理:「そんなことより、今日はしたいことがあるんですよ〜」

 今思い出したかのように佐祐理がポンと手を叩く。

祐一:「何ですか?」

舞:「・・・第1回」

佐祐理:「雪うさぎ誰が一番多く作れるかな選手権開催です〜♪」

 その言葉に水瀬家の奥から人々がぞろぞろと出てくるのだった。

 

祐一:「・・・それで、なんでこうなるんだろうな・・・」

 誰へともなく呟く。

 ここは水瀬家の庭。

 いつものごとくこういう時の水瀬家は伸縮自在である。

 辺りを見回せば知った顔のオンパレード。

栞:「いいじゃないですか、祐一さん。 こういうのは楽しんだ者の勝ちですよ」

 病弱スマイルで栞が張り切っている。

佐祐理:「そうですよ、皆さん一緒のほうが楽しいです」

 そう言って佐祐理はみんなにルールの説明を始めた。

 至って簡単、制限時間の1時間以内にどれだけ多くの雪うさぎを作れるかという勝負である。

 他には何をしてもよいとのことだ。

 チーム分けの結果、夜の学校チーム(祐一、舞、佐祐理)、物腰が上品チーム(香里、名雪、美汐)、お子ちゃまチーム(真琴、あゆ、栞)

 ・・・の以上9名で争うこととなった。

 秋子は審判として、忘れ去られた北川は忘れ去られた者として参加する事となった。

北川:「・・・忘れ去られた者ってのは参加するって言うんだろうか・・・」

 北川の呟きをスタートの合図として競技がスタートした。

あゆ:「うぐぅ・・・難しいよ」

真琴:「あう〜、なかなかできない・・・」

栞:「よし、1つ完成です」

 お子ちゃまチーム、あゆと真琴は戦力外。

 栞が意外な手さばきで次々と雪うさぎを完成させていく。

栞:「・・・これで10個目・・・って、何でっ!?」

 辺りに作り置いていた雪うさぎが綺麗に消え去っていた。

香里:「ふふ・・・油断大敵よ、栞」

栞:「お姉ちゃんっ、ひどいですっ!!」

 栞の作った雪うさぎを弄びながら香里が言い放つ。

香里:「私から取り返してみたら?」

栞:「むぅ〜っ、お姉ちゃんだからって許しませんっ!! いざっ!!」

 飛びかかってくる栞を香里が迎え撃つ。

 

祐一:「戦闘を始めたみたいだな」

 聞こえてくる戦闘音に耳を傾けながら祐一が呟いた。

 2m以上の雪のおかげで辺りは真っ白、動くには雪を崩して進むしかない。

 とりあえずは佐祐理のまじかるなパワーで雪を溶かしながら進んでいた夜の学校チーム。

 今は手先の器用な2人に作成を任せ、祐一が辺りを警戒中である。

舞:「・・・15個目完成」

佐祐理:「やっと6個目です〜」

 祐一の後ろの気配が立ち上がる。

佐祐理:「そろそろ参りますか」

祐一:「何処へ?」

佐祐理:「ちょっとだけ妨害工作です〜♪ 祐一さんは舞と雪うさぎを作っててください」

 そう言うと佐祐理はひょいと固められてもいない雪の上に乗り、歩いていってしまった。

祐一:「・・・なぁ、舞」

舞:「・・・何?」

祐一:「佐祐理さんって思ってた以上に凄い人だったんだな」

舞:「・・・気のせい」

 足跡も残さずに去っていった佐祐理を呆然と見つめる。

舞:「・・・祐一、手伝って」

祐一:「・・・そうだな」

 そう言って黙々と作業を再開した。

 

名雪:「美汐ちゃん、今いくつ?」

美汐:「・・・おばさん臭いという意味ですか・・・?」

名雪:「わっ、違うよ〜。 雪うさぎの数だよ〜」

美汐:「冗談です、今13個です」

 そんなことを言いながら作業を続ける名雪と美汐。

 その頭上にゆっくりと忍び寄る影が1つ・・・

佐祐理:「まぢかる・・・ファイヤーっ♪」

 ゴゥッ

 火球のつぶてが空より降り注ぐ。

美汐:「水瀬先輩っ!!」

名雪:「氷河の壁、召還だよ〜」

 厚さ30cmはあろうかという氷の壁が名雪達のいる空間を包み込む。

 火球はその壁に阻まれてその威力を失う。

佐祐理:「ほぇ〜、やりますね、名雪さん。 でもこれならどうですか〜・・・紅蓮の炎っ!!

 目が本気と書いてまぢになった佐祐理の放った炎は火球と言うよりは小型の隕石のようだった。

 その炎は氷河の壁も難なく貫き、雪うさぎを一網打尽に消滅させていった。

名雪:「うにゅ〜・・・」

美汐:「・・・けほっ」

 2人はその場にぱたりと倒れ伏した。

佐祐理:「任務完了です〜」

 そう言うと佐祐理はぱたぱたと新雪の上を歩いていった。

 

秋子:「終了です、皆さん集まってください」

 皆がぞろぞろと雪を掘って戻ってくる。

 秋子はそれぞれの個数を数え、優勝者を決定した。

秋子:「優勝は・・・夜の学校チームですね」

佐祐理:「やったね、舞」

舞:「・・・はちみつくまさん」

祐一:(・・・あの時佐祐理さんが何をしてきたのかは聞かないで置こう・・・)

 祐一が視線を向けた先にはやや煤にまみれた名雪と美汐が香里に担がれていた。

秋子:「それでは大会も終わったことですし、舞さんのお誕生日会でも始めましょうか、雪の中で」

一同−祐一:「は〜いっ♪」

祐一:「何故に雪の中っ!?」

 祐一の叫びが虚しく晴れ渡った空に響くのだった。

 

 

 

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