白い靄の中にいる・・・
身体が浮き上がるような感覚・・・
それに順ずるように眼下には大きく広がる大地。
その大地に光がぽつぽつと灯っている。
光は徐々に数を増し、いつのまにか眼下には眩いほどの光が集まっていた。
街だ・・・
そう感じた。
漂うような気分にはもう慣れてきた。
意外と慣れると気持ちがいいものだ。
眼下の街に下りようかと思い行動しようとする。
だが、動かない。
・・・まぁ、いっか。
身体を仰向けにごろんとひっくり返すと目の前には満天の星空が広がっている。
何の気もなしに星に手を伸ばす。
届くと思ったわけではない。
雰囲気的にそうしようと思っただけだった。
だが、その手を十分に伸ばすことは出来なかった。
なぜなら、突然目の前に見事な壁が現れたからである。
突然の出来事に反射的に腕を引っ込める。
・・・どうなってるの?
視界いっぱいの壁を目の前にして少し戸惑う。
そんな時、背後から叫ぶような声が発せられた。
何かと思い振り向くと、高そうな赤い絨毯の上に小柄な少女たちが集まっている。
皆、煌びやかなドレスを身に纏っている。
その中の一人が言う。
?:「お兄様はわ・た・しとご一緒にお食事に行くのよっ!!」
またそれに対し、一人の少女が言う。
?:「そんこといつ決めたのっ。 あにぃはボクと一緒に朝まで・・・あぁっ、こんなことボクの口からはとても・・・」
そう言って少女は恥ずかしそうに両手で顔を覆い隠す。
そこにいた他の少女たちがその言葉と行動にその部屋に一人だけの男に一斉に視線を向ける。
男は11の冷たい視線に思わず後ずさりながら言う。
?:「え、えっと・・・何か約束してたっけ、衛ちゃん・・・それに咲耶ちゃんも・・・?」
咲耶&衛:「ぎくぅ・・・」
男の言葉に男をお兄様と呼んだ咲耶とあにぃと呼んだ衛の二人が身体を硬直させる。
他10人:「じと〜・・・」
目線が痛い。
咲耶:「あ、あら、お兄様ったら、私との約束を忘れるなんて酷いわっ・・・」
衛:「そ、そうだよ、あにぃ。 ほ、ほんと、酷いなぁ・・・」
二人は声を震わせながらも何とか言葉を紡ぎだす。
他10人:「じと〜〜〜」
だが、少女たちの視線はなおも収まることはなかった。
咲耶&衛:「・・・ごめんなさい、嘘ついてました・・・」
10の目線に耐えられなかったのか、二人が大人しく頭を垂れる。
10人が非難の声を発するよりより早く、兄らしき男が皆に向かって言う。
兄:「・・・それじゃあ、みんなで食事にでも行こうか? せっかくみんなも集まったんだし・・・」
その兄の提案に、少女たちは各々目を輝かせ頷いた。
・・・すごく・・・すごく羨ましいぞっ!!
落ち着け北川、あれはたぶん妹だろ?
あまい・・・あまいぞっ、相沢っ!! それでこそ萌えというものが成り立つのではないかっ!!
・・・すまん、俺には理解の範疇を超えている・・・
ふっ・・・まだまだだな、相沢。
・・・それで言いたいことは?
ふっ・・・愚問だな。 あの子たち全員一緒にいただき・・・
そこで北川の声が途切れる。
背中に嫌な汗が流れ落ちる。
・・・なぁ、相沢・・・?
何かしら?
・・・相沢は?
お前のことは忘れないからなぁぁぁあぁぁああぁあぁあぁぁぁあああぁぁあぁぁぁぁぁぁぁっ!!
そんな叫びが北川の耳に届く。
その声は徐々に小さくなり、そして・・・消えた。
う・・・裏切り者おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!
ズガッバキッドゴッグチャァッメキメキッモキョッブチッ・・・ベチャ・・・
じ・・・実体がないのに・・・どうして・・・
心の目を開けば見えるものよ。
・・・がくぅ
そして空に静寂が戻った。
街頭に照らされた中世のヨーロッパのような町並みを男と少女たちが歩いていた。
屋敷を出るにあたって、男の隣を誰が歩くかという論争が繰り広げられたのだが、平和的にジャンケンで勝負を決した。
その結果、黒で統一されたドレスを着こなし一見落ち着いた雰囲気を醸し出す千影という少女と
兄の手を握り締め大きく腕を振って歩くこれまたドレス(色は黄を基調としている)に身を包まれた少女、雛子が兄の横を歩いていた。
雛子:「おにいたまと〜、あっるっく〜♪ みんなと〜、あっるっく〜♪」
よっぽど兄の隣が嬉しかったのか、歌まで口ずさむ。
その姿を後ろを歩く少女たちが恨めしそう、もとい羨ましそうに眺めている。
兄:「・・・仕方ないよなぁ」
誰にも聞こえないほどの声で小さく呟く。
隣の千影がぴくりと耳を揺らす。
兄:「・・・さすがに全員で横には広がれないからなぁ」
ため息を吐きながら足を進める。
背後からの視線が大分こたえているようだ。
普段大きく表情を変えない千影の顔が少し緩む。
だが、その顔はすぐにいつもの無表情に戻ってしまう。
いや、よく知っているものが見れば分かったかもしれない。
千影の思いに……
これから起こることは私だけが知っていればいい……そして私だけが……
千影にはある能力があった。
それは予知や先見と呼ばれるものである。
つまり千影にはこれから起こることがあらかじめ分かっているということになる。
だが、その能力は確実なものではない。
予知したことが起こるかもしれないし起こらないかもしれない。
だが、今回の予知だけはなにがあっても外れていてほしいと千影は思う。
なぜなら……
ドグゥッ
そう……この爆音の後……
空を見上げると数機の飛行船が飛んでいた。
そこから何十何百という黒い影がこの街目掛けて降ってくる。
黒い雨が降りそそぎ……視界が赤く染まっていくんだ……
千影は数瞬目を閉じたかと思うと、次の瞬間には目の前に迫る黒い影にかかとをめり込ませた。
な、何なんだよ、これっ!?
空に浮かんだまま13人の様子を眺めていた。
すると
影が生まれた。
その影は飛行船の影。
その影からぱらぱらと降っていく人影。
いや、人影にしては大きい。
それらは勢いよく街中へと墜落し、家屋を、街灯を、歩道を、破壊してゆく。
だが、その黒い影は濛々と立ち込める煙と炎の中から立ち上がり
動いている動物へと狙いを定めた。
そう……
人へと……
眼下の状況はひどい有様などという言葉では伝えきれるものではなかった。
出来の悪い黒いマネキン
黒い人影のような物体はそのように見えた。
黒い影は骨がしっかりとしていないのかゆらゆらと揺れ、人々へと近づいていく。
一体の黒い影
その先には逃げ遅れたのか小さな子供が転んでいた。
その子供へとゆらりゆらりと近づく影。
その子供は泣き喚き、地面に転がったままだ。
黒いマネキンが子供に覆いかぶさる。
黒い影が立ち上がるとそこに子供の姿はなかった。
……いや、いた……むしろ、あったというべきか……
黒い影の中
子供のものと思しき目と……その身体の機能を果たしていたであろう肉片が……
人を身体の中に取り込んだ黒い影はその場で停止し、空を見上げると
背中から夜の闇よりも暗い漆黒の翼を生やし、上空の飛行船まで戻っていく。
……
激しい嘔吐感に襲われ祐一はその場に膝をついた。
いや、膝など元よりない。
膝以前に実態がないのだから。
悪い夢だ……
そう……夢のはずだ……
千影:「……っち」
蹴りだした足を相手の身体に取り込まれる寸前で抜き取る。
近くで見ると黒い影は小さく波打っている。
足を突き入れた感じでは液体より少し抵抗が強いくらい。
一般にスライムと呼ばれる種族に属する生物なのだろう。
背後では突然の爆発音と千影の突然の行動によりみなが呆然と立ち尽くしていた。
千影:「……兄くんっ……ここへっ」
そう言って普段見ない強い口調で千影が兄に紙切れを手渡す。
春歌:「これは……地図、ですわね」
兄の広げた紙を覗き込みそう言う少女。
12人の中でただ1人、着物を着込み、普段は布にくるまれている薙刀を構えている。
可憐:「これは……私たちに逃げろということですか?」
薄い桃色のドレスを翻し、少女が尋ねる。
その声と表情には千影を残して逃げるなんて、という思いがありありと見て取れる。
背後の少女たちを伺いながら、千影が柄にもなく叫ぶ。
千影:「君たちがいても足手まといになるだけだっ……兄くんを連れて……早く逃げるんだっ!!」
その言葉に可憐が黙り込む。
その少女の肩にゆっくりと手が添えられる。
鞠絵:「……千影さんを信じましょう」
そう言う少女の足元で鮮やかな毛並みのゴールデンレトリーバーが辺りを警戒しながら低くうなり続けている。
少しの時間考えた後、可憐は顔を上げた。
可憐:「また……後で」
千影:「……ああ、約束しよう」
そう言い合うと、千影を残し古い夜の街並みを駆け出した。
祐一:「はっ!!」
勢いよく布団を跳ね飛ばし上半身を起こす。
祐一:「……っく、……夢だった……のか?」
心臓の鼓動が早い。
呼吸も荒い。
祐一:「ハァ……ハァ……一体なんだったんだ……?」
問いかけても答えが返ってくるわけではない。
荒い息を吐きながら起き上がる。
ふと目をやると、床には幸せそうに寝息を立てる北川の姿。
祐一:「幸せそうな顔しやがって……」
祐一は当然のように机上から黒マジック(油性)を取り上げるとおもむろに蓋を外しだす。
祐一:「悪く思うな北川……恨むならどうしてもお前と春原がかぶって見える作者を恨め……」
(ただ今CLANNAD進行中♪ まだまだ終わりません……)
訳の分からないことを呟き作業に移る。
数分後……
祐一は部屋のドアを静かに閉めた。
秋子:「おはようございます、祐一さん」
秋子が祐一に気づき、困ったような声で挨拶を交わす。
祐一は目の前に並べられた料理……一部、食事かどうか疑問が残るが……を見て嘆息する。
祐一:「……なんだってこんなに大量の……食事と食べ物(?)が用意されているんですか?」
並べられた料理を順々に見やる。
左から順番に秋子、佐祐理、香里、美汐……ここまではそれぞれ和洋は異なるが、典型的な朝食の形をとっている。
おそらく味も問題ないだろう。
問題となってくるのは次からだ。
まずは舞。
祐一:「……何故鍋なんだ?」
舞:「……おいしいから」
祐一は怪訝に思いながらそっと出汁をすくい、口に含む。
祐一:「……まぁ、味は結構いいし……いいか」
舞:「……ボタン鍋、嫌いじゃない」
何故か一抹の不安を抱くも、祐一は次の料理へと移る。
祐一:「次は栞か……」
栞:「はいっ、頑張りましたっ」
健気な笑顔を覗かせながら、栞が料理を差し出す。
祐一:「……栞、これはなんだ……?」
栞:「雪だるまです、早く食べてください、融けてしまいます」
祐一:「……次」
栞:「えう〜、そんなこと言う人嫌いですぅ」
栞の声を左から右へと聞き流しながら次へと向かう。
祐一:「……次の次だ」
真琴:「なんでようっ、ちゃんと食べなさいよぅっ!!」
あゆ:「うぐぅ……頑張って作ったのに……」
そう言う二人の前に置かれた皿には最早、原物が何であったのかも分からないような真っ黒な炭が悠然とそびえたっていた。
完食するともれなく胃癌がついて来るだろう。
またも二人の非難の声をスルーして最後の人物の前に辿り着く。
名雪:「……くー」
祐一:「……まだ寝てるじゃないか」
その言葉通り、名雪の大きな瞳は現在、薄い目蓋に覆われ確認することは出来ない。
だが……
名雪:「失礼だおー……そんなこと言う祐一はー……これをプレゼントー……」
ゆっくりとした口調に似合わず、目にも見えない速度で腕が動く。
手に握られた物体が祐一の口に突っ込まれる。
そのまま名雪の手が口を塞ぐ。
女の子特有の柔らかい香りが祐一の鼻孔をくすぐる。
だが、そんな匂いを十分に感じる間もなく、口の中の物体が祐一の神経を狂わせはじめる。
祐一:「もっ!? むぐぐっ!?」
この世には逆らえない存在が存在する……
それらは神や
だが……その上に君臨するものが存在するようだ……
それは当然……
そんな世界観をぶち壊す思いを浮かべながら……祐一は再び眠りについた。
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さて、ひさびさのSS更新です、お楽しみ頂けたでしょうか?
楽しんでいただけたなら幸いです。
楽しんでいただけなかったのであれば、これから善処いたします……
……ということで、ようやくCLANNAD完全攻略っ!!……とまではなっておりませんが一応CG100%達成です。
なので、珍しく後書きなどを書いております。
決して、決して本文が短いからとかいう理由ではございませんよ?
……本当ですよ?
さて、少々本文に触れますと……これからどうしましょうか?w
なにか大層に複線が張られている気もしますが、使用……するんでしょうか?
……使用出来るといいですね♪
次回予告としまして、折角CLANNADクリアしましたしねぇ……
さて、どうなることやら……
全然予告になってないのですが本編に対してはここいらで……
本題はここからです。
CLANNADのネタばれを含みますので攻略が完了していないお方はこれ以上進まないほうがいいかと思われます。
それと、これはボク自身の意見ですので気を悪くなされないようよろしくお願いします。
それらを了承していただいた方のみ続きをご覧ください。
↓いろんな意味でDANGER↓
……最終的には渚、生きていてよかったです。
しかし……これはボクの感想ですが、あまりに人を詰め込みすぎてないでしょうか?
メインヒロインと言えるであろう渚、杏、智代、風子、ことみ……この辺りはまだよかったです。
ですが……サブヒロインの方々の物語は少々短かったように感じます。
あまつさえ、なんですかっ!?
男キャラが格好良すぎっ!?
椋が速攻乗り換える気も分からないでもありません。
ですが……これって、恋愛アドベンチャーゲームですよねぇっ!?(春原風に)
男キャラのほうが泣けそうな場面が多いのは何故ですかねぇっ!?(またも春原風に)
女性兼用なの?(最後はことみ風に)
……いや、その辺りのことは別にいいんですけど。
まぁ、時期が時期だったもので、共感できるところが処々にあり考えさせられる作品ではありました。
ですが、先にも書いたように、キャラが多いためシナリオ分岐も多く、泣く場所も散り散りになってしまった感が否めませんでした。
結果的に、残念ながらシナリオの点ではボクにあまり会わなかったようです。
初めの幻想世界で『永遠はあるよ……』が思い浮かびましたし……
ですが、ですがですがですがっ、キャラはよかったと思われます。
とりあえず、杏と智代はキャラの立ち具合から春原への破壊行為まで全てにおいて気に入った限りです。
しかし……今回のキャラ、Kanonと似通った点が少々……
外見的性格的特徴では北川=春原、佐祐理=有紀寧。
外見的なもので言えばいつまでも若々しい早苗さん=秋子さん。
しっかり者の姉と大人しい妹……フラグ勝平では姉のほうが妹離れ出来ていませんでしたけど。
そして幽体泥棒少女……
残念ながら万年眠り姫や妖弧、銃刀法違反者、おばさんじみた人などなどはいませんでしたね。
……残念です。
結局は少し期待しすぎたせいもあり、少々物足りないものがありました。
が、感動したことに変わりはありません。
次もよりよい作品を懲りずに期待します。
04・06・28 CLANNAD 攻略終了
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